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解決事例

生前に子や孫に贈与があったケース

2026年3月

ご相談時の状況

被相続人 父
相続人 長男、長女
相続財産 ・預貯金 4,500万円
・有価証券 1,500万円
・自宅土地・建物 2,500万円
・生命保険 1,000万円

ご相談内容

父が亡くなり、相続税申告についてご相談いただきました。
相続財産を確認するため預金の入出金履歴を調べたところ、生前に父の口座から長男や長女、孫名義の口座へ複数回にわたり資金が移動していることが分かりました。このうち孫への資金移動については、孫が相続で財産を取得していない場合、子への贈与とは確認すべきポイントが異なります。
相続人の方も、一部については「父から贈与を受けたもの」と認識していましたが、すべての資金移動について贈与契約書や贈与税申告書が残っているわけではなく、中には何のために移動した資金なのか分からないものもありました。
そこで、過去の資金移動のうち、贈与として成立しているものと、父の財産として申告に含めるものを整理したうえで、適正に相続税申告を行いたいとのご相談をいただきました。

実施した内容

■ 過去の資金移動の洗い出し
被相続人の預金通帳や取引履歴を確認し、長男・長女・孫など親族への資金移動を時系列で整理しました。
金額や振込先だけで判断するのではなく、資金移動の時期、頻度、その後の資金の使途などについても相続人の方から聞き取りを行い、それぞれの資金移動の内容を確認しました。

■ 贈与に関する資料の確認
贈与契約書、贈与税申告書、預金通帳など、過去の贈与を確認できる資料を収集しました。
資料が残っていないものについては、資金を受け取った方が贈与を認識していたか、受け取った資金を自ら管理・使用していたかなども確認し、単に口座間で資金を移しただけなのか、実際に贈与が行われていたのかを整理しました。

■ 過去の贈与が相続税に与える影響を確認
贈与として成立していた場合でも、贈与をした時期や贈与を受けた方によって、相続税の計算上の取扱いが異なります。
特に、暦年課税による贈与については、相続や遺贈によって財産を取得した方が被相続人から相続開始前の一定期間内に贈与を受けていた場合、その贈与財産の一部または全部を相続税の課税価格に加算して計算する必要があります。
2024年1月1日以後の贈与からは、生前贈与加算の対象期間が従来の3年から段階的に7年へ延長されています。この延長は経過措置により段階的に適用されるため、実際の加算対象期間は相続開始の時期によって異なります。
本件では、どの贈与が加算対象期間に入るのかを確認し、加算が必要な贈与と不要な贈与を仕分けました。なお、延長された期間の贈与には総額100万円の控除があります。
また、生前贈与加算された財産について、過去の贈与時に贈与税を納めていた場合には、その贈与税額のうち一定額を相続税額から控除できる場合があります。

■ 相続時精算課税を利用していた贈与の確認
過去に相続時精算課税を選択して贈与を受けていた場合は、暦年課税とは異なる取扱いになります。
相続時精算課税では、贈与を受けた財産を贈与時の価額で相続税の課税価格に加算します。ただし2024年1月1日以後の贈与については年間110万円の基礎控除が新設され、この範囲内の贈与は原則として加算対象になりません。
そのため、過去に相続時精算課税を選択しているかどうかについても、贈与税申告書などを確認しました。

■ 贈与として成立していない資金移動の確認
親族名義の口座に資金が移っていたとしても、実際には被相続人が通帳や印鑑を管理し、資金を自由に使っていた場合などは、贈与が成立していないと判断されることがあります。
このような場合には、親族名義の預金であっても、実質的には被相続人の財産として申告対象になる可能性があります。そのため、名義だけで判断せず、誰が管理し、誰が利益を受けていたのかを確認しました。

■ 相続財産を確定し相続税申告
過去の資金移動を整理したうえで、相続開始日時点の財産に加え、相続税の計算上加算が必要となる生前贈与についても整理しました。
その結果を財産一覧に反映し、相続人の方にも資金移動ごとの取扱いと相続税への影響をご説明したうえで、相続税申告を行いました。

提案のポイント

■ 贈与の時期によって相続税への影響が変わる
生前贈与が成立していても、相続開始までの期間によっては相続税の課税価格に加算が必要です。特に現在は、生前贈与加算の対象期間が相続開始前最大7年まで延長されているため、過去の贈与履歴を早い段階で確認する必要があります。

■ 贈与税を払っていても確認が必要
贈与税を申告・納付していた場合でも、それだけで相続税との関係がなくなるわけではありません。相続税の課税価格への加算対象となる場合には、過去に納付した贈与税を相続税額から控除できるかもあわせて確認します。

■ 相続時精算課税の有無を確認
相続時精算課税を選択している場合は、暦年課税とは相続税の計算方法が異なります。過去の贈与税申告書などを確認し、どの制度を利用して贈与していたのかを把握したうえで、相続税への影響を確認することが重要です。
相続時精算課税の仕組みや相続税との関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「相続時精算課税制度」とは?

■ 「贈与したつもり」だけで判断しない
贈与については、資金を受け取った方が贈与を認識し、自ら管理していたかなど、実際の状況を確認する必要があります。形式だけでなく実態を確認したうえで、相続財産に該当するかを判断します。

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